雑誌づくりに通ずる、植物の世界。

編集者としてこれまで数々のメディアやイベントプロデュースに携わってきたニーハイメディア・ジャパンのルーカスB.B.さん。築70年以上という事務所兼ご自宅には、これまで世界中を旅してきたルーカスさんならではの植物との暮らし方がありました。

築70年の古民家を自分仕様に

 

近年の再開発で大きく変貌を遂げた渋谷ですが、ビル群を背にほんの10分ほど歩けば閑静な住宅街があらわれます。そしてその住宅街の一角にある個性的な建物が、ルーカスさんの事務所兼ご自宅。塀に描かれた巨大なアートワーク、そして塀の向こう側には昔ながらの庭付き日本家屋が鎮座しています。

「もともとこのすぐ近くに事務所があったんだけど、たまたまこの物件を見つけていいなって思ったんだ。築年数? 正確にはよくわからないけど70年ぐらいは経っていると思う」

 

 家を借りたきっかけをそう話してくれたルーカスさん。今でこそ“古民家=おしゃれ”なイメージがありますが、この家を借りた2000年当時はただの古くさい家ということでまったく人気がなかったのだそう。

「古いから結構手は加えたよ。床を補修したり、壁を取り払ったり、棚を付けたり、縁側 をつくったり。あと、1階を事務所、2階を自宅としてつかっているから、その都度使い勝手を考えながらアレンジしてきたんだ」

 

押し入れを見せる棚にアレンジしたり、旅先で見つけたものを飾り付けたり。ルーカスさん曰くコンセプトは「特にない」とのことですが、室内は和とモダンをミックスさせたぬくもりのある空間が広がっており、棚の上やベランダの隅っこなどにさりげなく置かれた植物が、さらにそれを引き立てています。

「ここに住み出したのは2000年ごろ。庭には柿ともみじしかなくて殺風景だった。そこから少しずつ植物を増やしていったんだ。壁に覆いかぶさっているのはジャスミンだね」

 

庭という空間もこの家の特徴のひとつで、椿、八重桜、山椒、トケイソウなど、おばあち ゃんの家の庭でよく見かけるような植物が。この植物 のセレクトにもルーカスさんらしさが表れています。

植物と一緒に自分も成長したい

 

「春はジャスミンの香りが楽しめるし、秋になると柿の実がなって、冬になると椿の花が 咲く。僕は基本的に白い花が好きなんだけど、季節ごとに変化が楽しめるのがいいよね。 仕事が忙しいからあまり手間のかかる植物は選ばないようにしている」

 

その言葉通り、あまり水をあげなくてもいいゼラニウムは雨が少しだけあたるベランダに 。これまで室内で育ててきて何度か枯らしてしまったという経験から、その植物にあった育て方を体得してきたのだとか。

「枯らしてしまうのはもちろん残念だけれど、そういうものだと考えるようにしている。 変に気負う必要はまったくなくて、植物と一緒に自分も成長していけばいいと思っているから」

 

そんなふうに植物のある暮らしを自分らしく楽しむルーカスさんですが、実は植物を軸にしたライフスタイル誌『planted』をつくっていたことも。ディズニーランドの特集……ではなくディズニーランドの植物にスポットを当てた企画や、スタジアムの芝を管理するグラウンドキーパーにインタビューを行うなど、いわゆる園芸雑誌にはないユニークな企画で溢れています。

「日本の園芸雑誌はものすごくクオリティが高いから、僕がやるのならどんな雑誌かなと考えてつくったのが『Planted』なんだ。子どものころからおばあちゃんの庭で遊んでいたから、植物そのものは好きだったよ。でもこの媒体を通してより深く知るようになった。また機会があれば植物の雑誌をつくってみたいね」

庭の中で生まれる小さな世界

 

「植物っておもしろいよ。ここは渋谷区だけど、植物があるからカエルや虫が飛んでくるし、秋になれば鳥やハクビシンが柿の実を狙っている。動物たちは一番の食べごろを知っているから、こっちもそれを奪われないように頭をつかう。この庭のなかでひとつの世界ができている感じがするんだ」

植物のある暮らしを送ることでとある変化も生まれたとルーカスさん。

 

「もともと植物に興味がなかった妻も、最近は僕より庭に出て手入れをしている。玄関に置いてある落ち葉は、彼女が拾ってきたもの。どんな意図があるのかは聞いたことはないけど、植物から何か感じているんじゃないかな」

 

人間と家と植物。この家の居心地の良さはその3つが喧嘩することなく尊重しあっていていることなのかもしれません。

「ほとんどの人は田舎にいかないと緑がないと思っているかもしれない。でも森の木もうちの庭に生えている木も、本質は変わらない。植物ってパワーをもらえる存在だからね。 庭をつくったり植物を育てるってすごくクリエイティブ。どういう庭にしたいか想像して植物を植えて、でも予想外のことが起こってまたやり直したり。そういう意味では、植物を育てることは、雑誌づくりに似ているところがあるのかもね」